文章置き場

二次創作小説を記録しています。原作者、公式とは関係ありません。現在はWTを中心に上げています。R18作品はピクシブのみ。

心踊る夜を貴方に(wt烏出)

2019/9/20 23:05
出水がハッピーバースデーなので、速攻でとりいずSS書いた。こういう事は勢いが大事なのです。





「誕生日かあ」
出水はため息をついた。
彼の持つスマホには日付けが変わると同時に、お祝いのメッセージが溢れかえっている。それを目線で追って、一通り返す。
作業が終わり、出水は部屋にある姿見に視線を向ける。ふと呟いた。
「嬉しいっちゃー嬉しいんだけど、ホント変わんねーな、おれ」
日付けを一つ飛び越えただけだ。何も変わりはしない。ただ去年と変わった事と言えば-
スマホが鳴った。
出水は慌ててそれを掴む。相手を確認した。
表示された名前は烏丸京介だった。すぐにマイク付きのイヤホンを差し込み電話に出る。
『先輩。夜遅くにすみません』
耳に烏丸の落ち着いた声が響いてくる。
「京介、お前が一番最後だぞ。他の奴ら全員に返事する余裕あったし」
『それは良かったです』
「え?」
『俺にその分ゆっくり相手してくれるんですよね?』
「付き合い初めてから、図々しくなってきてないかおまえ」
『図々しいというより独占欲です。今傍にいられれば良かったのに』
「そんな可愛い事言われておれは落ち着かないんだが」
出水は息をついた。惚れた弱味というやつだ。家の場所は知っている。今すぐ走って行きたいと思うほどに。
『逢いたいですか先輩』
「正直言って、顔が見たい。直接言ってほしい」
『じゃあ先輩。しっかり深呼吸をしたら部屋の窓を開けてください』
その言葉にもしやという予感が走り、呼吸もそこそこに窓を開けた。
薄暗い住宅街の道、そこに烏丸は立っていた。
「先輩、深呼吸してくださいって言ったじゃないですか」
携帯を切りながら、烏丸は笑っていた。
出水はスマホをベッドに放り出し、眠っている家族に気付かれないよう、なおかつ急いで外に出た。たったこれだけの事で息を切らす。
「先輩、俺は別に逃げませんよ」
平然とした後輩兼恋人が憎たらしい。愛おしい。
出水は烏丸の肩を掴んでキスをする。相手は驚いたようだが、背中に手を回してきた。
深夜の静寂の中、しばらく逢い引きの音が響く。
やがてお互い身体を離す。
烏丸は切なさを笑みに乗せて言った。
「誕生日おめでとうございます、先輩」
その顔に出水はしばし見とれた。すると烏丸はからかった。
「先輩、俺の顔が好きなんですよね」
「……その通りだよ」
こんなに簡単に願いを叶えてくれるこいつに、かないっこない。出水は降参の旗を振るしかなかった。